ある老夫婦の夕食。
「オイ、俺の見つけた数の素どこだか知らんか?」
「味の素なら食卓の上に出ているはずよ」
「味の素じゃない、数の素・・いやいや素数じゃ」
「ソースなら冷蔵庫に入ってるわよ」
「違う違う、ソースじゃやなくて素数だって言っとるじゃろう。わからんやつじゃな」
「どっちも同じような物じゃないの、どうせ何かに”かけて”使うんでしょ。そのお肉には
ソースのほうが合っているわよ」
「そんな事言っているんじゃない!ほら、わしがオイラーの式を駆使して発見したやつじゃ」
「残念、オイスターソースは今ちょっと切らしちゃっているわ」
「もうわからんやつじゃな・・ブツブツ」
夫は老眼鏡をめがね拭きできれいにしてかけなおし、また机の上を探し始めた。
「まったく、お前は片づけというものをしらんのか・・ブツブツ」
夫はしばらく、あちこち探し続ける。
「お~。あった、あった。何でこんなところにはいっとるんじゃ」
「そんなに大切ならちゃんとしまっておきなさいよ」
「そうじゃな。これからはそ・・う・・す・・る・・・・」
そのとき、夫は目眩を感じよろめいた。
「あ、あなた、危ない」
妻が支えようと手を差しのべたが、夫はしたたかに柱に頭をぶつけ、その拍子に手に持っていた素数を落としてしまった。
「あ~~」
夫の叫びもむなしく、素数はスローモーションのように板張りの床に落ちていった。
「パリン」
乾いた音が部屋の中に響き渡り、それは真っ二つに割れてしまった。
「なんていうことをしてしまったんだ!」
夫は絶望的に叫んだ。
妻は冷静にそれを見ていた。
「割れちゃうんじゃぜんぜん使い物にならないわね、その素数」
夫はうなだれたようにその破片を見つめている。
「割れるはずはないんだが・・なんてったって素数なんじゃからな」
「さあ、お父さん(13)こっちのソースを掛けてセブン(7)イレブン(11)で買ったお(29)食べましょう」
妻の慰めに夫は空しい(67、41)気持ちで食(449)するのだった。