SF小説「アインシュタインの神」では人工知能がひとつのキーとなっています。そこで、ちょっとかつての人工知能全盛時代を思い出してみました。

1980年代後半、世間は人工知能で結構盛り上がっていました。世間と書いたのは大げさでなく、洗濯機なんかにもAIコントロールとかファジィ制御搭載、ニューロ制御などという言葉が使われていました。
当時、コンピューター関係の展示会といえば、春のビジネスショーと秋のデータショーが双璧でしたが、そこでも人工知能はメインとなっていて、華やかに展示されていました。
大手コンピューターメーカーのブースで、エキスパートシステムを使って関ヶ原の戦いを再現していた展示が私には印象的に残っています。
どんなものか思い出してみると、複数のエキスパートシステムを搭載したマシンをそれぞれ東軍、西軍の武将に見立てて、推論をさせ(どこまで本当にやっていたかはわかりませんが)、勝負させるものでした。
「さあ、東軍が劣勢に陥った。家康どうする! おっと小早川陣営に伝令が飛んだ。さあ小早川秀秋どうでるか?・・」などと迫真のナレーションでアピールしていました。今考えると嘘のような話ではあります。

第5世代コンピュータ

また当時は第5世代コンピュータプロジェクトという国家プロジェクトが最盛期で、日本は世界の先端を走っていました。そこには大手コンピュータメーカーからも優秀な人材が集められて研究されていたようです。このプロジェクトではプロローグ言語を高速で処理するマシンを作ることが主な目的だったようですが、当時の開発者の言に「数年後にはすべてのコンピュータが第5世代になる」という発言もあったと思います。
プロローグというのは、今ではあまり知られなくなってしまいましたが、当時はパソコンでも使えるプロローグ言語(有名なものにprolog-KABA)もありこれを使うとほんの数行のプログラムでパズルを解くことができたりして、当時、はまっていた人も多いのではないでしょうか。
また、コンピュータの世代とは、第1世代:真空管のコンピュータ、第2世代:トランジスタのコンピュータ、第3世代:集積回路のコンピュータ、第4世代:超LSIのコンピュータ、ですがここまではノイマンマシン(コンピュータの先駆者フォンノイマン博士の名にちなんでいる)と呼ばれ、中央処理装置(CPU)、記憶装置、演算装置、入出力装置からなり、直列的に段階を追って一歩一歩処理するプログラム方式のコンピュータのことで、現在も基本的にはこの方式(並列処理もできるようになっていますが)です。これに対し第5世代とは知識処理システムとも言えるコンピュータで、記号を処理して推論を行うシステムのことを言っていました。

「写真は日本の第5世代コンピュータプロジェクトをアメリカの脅威として紹介しているファイゲンバウム氏の著書(1983年)」